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What is "Design Thinking"?

 #1 デザイン思考とは?

 近年いろいろなところでデザイン思考という考え方が注目されるようになっていますが、デザイン思考に関する多くの著作を見ても、デザイン思考とは何かの厳密な定義を見いだすことはなかなかできません。

 

 しかし、デザイン思考はデザイナーが実践している「デザイン」という活動と共通点がたくさんあることも事実です。例えば、人間中心の視点や発想を大切にすること、現実の観察が原点であること、直感・洞察を重視すること、アイデアをたくさん創造すること、試作品(プロトタイプ)を早く多く作って改善すること、などです。デザイン(design)とは、 様々な製品、建築、服飾品、アイデアなどを設計・考案することですが、そのデザインのプロセスを、より明確かつ具体的に定型化し、いろいろな分析道具を揃えたものがデザイン思考だと言えます。

 アイデア思考の考え方や実践例を分かりやすく解説してる「クリエイティブ・マインドセット」(日経BP社)において著者のトム・ケリーとディヴィッド・ケリーは、「デザイン思考はイノベーションを日常的に行うための方法論の一つ」であると述べています。そしてデザイン思考を「デザイン主導のイノベーション」と言い換えて、デザイン思考を活用することによって、誰もが生まれながらに持っている創造性を開花させることが可能であるとしています。

 

 さらにイノベーション・プロセスには、3つの要因、すなわち「技術」(技術的有用性)、「ビジネス」(経済的有用性)、そして「人間」(有用性)が重要な役割を果たしていて、デザイン思考もこの3つの要因を踏まえた上で、特に人間のニーズを重視し「常に人的要因を出発点にする」と述べています。

 今やデザイン思考は、モノが売れなくなった現代において、商品開発や新規事業開発などのビジネス分野に盛んに使われるだけでなく、地方やコミュニティーの活性化などの社会的問題の解決(ソーシャル・デザインまたはコミュニティー・デザイン)などの分野でもどんどん利用されるようになっています。

 

 #2 デザイン思考のプロセス

​ 鈴木ゼミでは、数年前からデザイン思考を軸にしてリーダーシップを養成するためのソーシャル・デザインのプロジェクトを実践しています。今は大分県国東と島根県益田という2つの地域の課題に取り組んでいます。

 #3 「人間中心」「プロトタイピング」「スピード」

 それでは、道具としてのデザイン思考のやり方(プロセス)とはどのようなものでしょうか。

  上述の「クリエイティブ・マインドセット」では、デザイン思考を一番最初に世に広めたデザインコンサル会社アイデオ IDEOの考え方を紹介しています。それは(1)着想(Inspiration)、(2)統合(Synthesis)、(3)アイデア創造と実験(Ideation & Experimentation)という3つのプロセスで表現されています。

「着想」とは、問題に対する気づきですが、それをただ待っているのでは得られません。むしろ自らが外に出て、人々の行動を観察したり会話をしたりして、背景にある課題を見つけるヒントを得ることが求められます。そして、そのためには「共感」を持って観察したりインタビューしたりすることが効果的です。

「統合」とは、観察から得られた洞察を、より適切な理解へと整理し直すこと。言い換えれば、観察から得られた気づきに意味を付与すること(「意味づけ」)です。正に、この統合のところに、新たな切り口による問題解決の可能性があるのですが、それだけにしっかりと問題を見据え、考えを良く練る必要があります。

「アイデア創造と実験」は、その言葉通り無数のアイデアや選択肢を考え、それを検討し試してみます。特に有望なアイデアは、すばやくラフな試作品(プロトタイプ)を作ってみて、利用者の反応を見てみることが新たな気づきやアイデアにつながります。そしてそれを繰り返すことで、効果的にアイデアを改善することができます。

 このデザイン思考をIDEOと一緒に定型化し、大学教育の中で位置づけたのがスタンフォード大学のd.school(デザイン・スクール)です。そこでは、デザイン思考を5つのプロセスで表現しています。

(1)「共感 Empathize」、(2)「問題定義 Define」、(3)「創造 Ideate」、(4)「プロトタイプ Prototype」、(5)「テスト Test」などです。前述の3つのプロセスと多少表現は異なりますが、デザイン思考をいかに実行するかの本質的な部分は同じで、さらに細かく説明されています。

 #4 デザイン思考と各プロジェクトの関係 

国東プロジェクト

 このプロジェクトは4年前に先代のゼミ生が、国東の天台宗興満山興道寺住職である摩尼さんに出会ったことが始まりでした。摩尼さんは元気がなくなりつつある国東の状況に危機感をいだいていて、その話を聞いたゼミ生が鈴木先生に相談したのがキッカケでした。鈴木ゼミとしていかに国東に刺激を生み出せるか、国東の人々と何ができるかに挑戦する国東プロジェクトが始動しました。

益田プロジェクト

 鈴木先生の長年の友人である経営者の木村勝男さんが、地域貢献を通じて故郷である島根県益田市を元気にしたいという思いを鈴木先生に相談されて、本プロジェクトが始まりました。活動はゼミ生のソーシャル・デザインの実践の場であり、さらに​APU国際学生にも実践体験をさせたいという鈴木先生の思いもあり、2016年度から地域の方々とのコラボの形で、益田プロジェクトが始まりました

❶「人間中心」とは、問題を抱える人々に対して、共感と尊敬を持った目で観察し、問題を自分ごととして捉え、問題解決しようという姿勢がデザイン思考の原点であります。

❷「プロトタイピング」とは試作づくりのことで、単にアイデアではなく、実践を繰返しながら継続的に改善していくという地に足がついた活動のことです。

❸「スピード」は、改善活動というものは1回より、2回、または複数回やればやるほど良くなるはずです。ですから改善のスピードを上げることで、より多くの有用な情報がより早く得られ、格段に多くの学習が可能となります。

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